足利再審 弁護側弁論要旨(産経新聞)

 足利事件は、これまでの冤罪(えんざい)事件とは異なり、真犯人が現れなくても、菅家さんの自白は完全に虚偽であり、無実は明白。足利事件は、自白してもDNA型鑑定で無実が証明されるというわが国で最初の例である。

 弁護団は平成9年10月から、正しいDNA型鑑定で無実が明らかになると述べてきたが、最高裁も宇都宮地裁も聞かなかった。最高裁が再鑑定を命じていれば、菅家さんの無実が明らかになり、真犯人の逮捕・起訴も可能だった。最高裁の責任こそが重い。

 菅家さんの無実は、「科学警察研究所(科警研)のDNA型鑑定」と「菅家さんの自白」が真実でなかったことを意味する。検察は過ちに目をつむり、DNA型再鑑定で無実が明らかになったとして有罪判決の破棄を求めているが、「臭いものにふた」で裁判所のとる態度ではない。

【DNA型鑑定】

 最高裁によると、DNA型鑑定の証拠能力は、科学的原理が理論的に正しいか、技術を習得した者が科学的に信頼された方法で行ったと認められるのか−で判断される。

 科警研の福島弘文所長は平成4年の研究会で「科警研の鑑定法は問題があり、今はやめた方がいい」と発言している。また、その方法で撮影された写真について、(再鑑定を行った)鈴木広一・大阪医科大教授は「なかなか判定しにくい」、本田克也・筑波大教授も「判定不能」と証言しており、科警研の鑑定は完全に失敗だった。

 犯人の体液が付着していると考えられる資料からの鑑定は、被害者のDNAを抽出する可能性があり、確認するのは基本。科警研はそれを怠り、(鑑定資料とした)半袖下着に被害女児や女児の母親のDNAが付着していることを見落としたのは、深刻な問題。

 科警研の鑑定は刑事裁判の証拠として使用できる水準に達していない。

【自白】

 無実の人が進んで自白するはずもなく、菅家さんの自白は任意ではない。

 警察は、違法な取り調べを繰り返し、菅家さんに恐怖心を抱かせただけでなく、根本的に間違っていたDNA型鑑定を決め手のように扱い自白を迫った。森川大司元検事の尋問で、警察が「自白がなければ逮捕できない」という捜査指揮をしていたことが明らかになった。DNA型鑑定を決め手のように装い、自白を迫った警察の取り調べは、自白を誘発する恐れの高い違法なものだ。

 森川元検事も、DNA鑑定の証拠価値を誤って菅家さんに伝え、錯覚させ、自白させたと言わざるを得ず、検察への自白も任意性がない。

 法廷では、菅家さんは森川元検事のマインドコントロール下にあった。森川元検事は、(菅家さんが足利事件を否認した)平成4年12月7、8日の取り調べの結果を隠したまま、事実に反する質問を行い、裁判所を欺く論告を行っており、菅家さんの公判での自白の任意性は否定されるべき。

【総括】

 「科警研のDNA鑑定」と「自白」には証拠能力がない。足利事件の有罪判決が破棄される理由は、検察の主張するDNA型再鑑定で無罪が明らかになったのではなく、有罪にする証拠がなかったということ。

 それは、足利事件について下されたすべての裁判が誤りだったことを、裁判所が認めることを意味する。司法にとって恥ずべきことに思えるが、過去の過ちを率直に認める判断こそが、国民の信頼をつなぎ止める唯一の道と信じて疑わない。無罪判決が、足利事件の誤判の原因をえぐり出し、わが国の刑事司法の未来に光をあてるものであることを望んでやまない。

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